第3回企画展

国 絵 図 の 世 界 
− 古 地 図 に み る 茨 城 −

    
会期: 2005年9月10日(土)〜10月23日(日)
主催:幕末と明治の博物館・茨城大学・日本地理学会
 展示概要

 茨城県は江戸時代に数多くの地理学者・地図製作者・探検家を生みました。古河藩の家老鷹見泉石,数々の刊行図を描いた長久保赤水,『訂正増訳采覧異言』を著した山村才助,傘式地球儀を制作した沼尻墨僊,蝦夷地探検で知られる間宮林蔵・木村謙次,徳川斉昭の御絵師酒井喜煕などは全国的にも著名です。江戸時代にこのように数多くの地理学者を生み出した茨城の風土と進取の県民性を知っていただくため,日本地理学会が茨城大学で開催される9月中旬を含む時期に県内の博物館が連携して「茨城が生んだ江戸時代の地理学者たち」という共通テーマでの展示を行いました。

 江戸幕府は諸国の大名に国ごとの絵図(国絵図)と郷帳などを作成させました。なかでも全国的規模で実施した慶長(1596〜1614)・正保(1644〜1647)・元禄(1688〜1703)・天保(1830〜1843)年間の国絵図が著名です。国絵図は国郡制の枠組みによって描くことが内容上の基調であり,公式な地図として国土基本図的な役割を果たしていました。

 現在の茨城県域は,江戸時代において常陸国と呼ばれていた地域と下総国と呼ばれていた地域の北部を含んでいます。国絵図には幕府や藩が徴収・作成したものや知識人が写し作成した国絵図,出版された国絵図などが残されています。この企画展では,国単位に描かれた地図である常陸国・下総国の国絵図を展示することで,当時の人々がどのように茨城県という地域を表現し,捉えていたのかを探りました。



 展示構成

T 江戸幕府撰国絵図―江戸時代の国土基本図―

U 写された国絵図―模写図・考証図―

V 出版された国絵図―刊行国絵図―

W 藩領絵図―水戸領分絵図―

 関連行事

■公開講演   「国絵図の世界」について
  日  時 :9月18日(日) 午後1時より4時半まで
  会  場 :茨城大学水戸キャンパス共通教育棟 10番教室

  公演内容:
  13:00〜14:00 川村博忠(東亜大学):国絵図の世界
                     −江戸時代の国土基本図−
  14:00〜14:30 杉本史子(東京大学):国図と出版文化
  14:30〜15:00 平井松午(徳島大学):国絵図を三次元表示する
                     −絵図のGIS分析−
  15:30〜16:00 玉川里子(水戸市立博物館):
                     茨城が生んだ江戸時代の地理学者たち−
  16:00〜16:30 小野寺淳(茨城大学):絵図を写す人々
                    −常陸国絵図を例に−
  ※聴講は無料。車入構可。

■講演と解説会
  日  時 :9月23日(金)・10月9日(日) 午後1時より
  場  所 :幕末と明治の博物館
  講  師 :小野寺 淳先生(茨城大学教授)

■学芸員による展示解説
  日  時 :9月11日(日)・10月16日(日)  午後1時より
  場  所 :幕末と明治の博物館

■スタンプラリーの実施
  共催館に設置されたスタンプを3個集めた方に,今回の催し物に関する絵葉書をプレゼントしました。

 「茨城が生んだ江戸時代の地理学者たち」共催連携館

○ 水戸市立博物館  7/1〜2006/5/31
   (酒井喜熙他:古地図からみえる風景−城下町水戸の変遷)
○ 土浦市立博物館  9/10〜10/23
   (沼尻墨僊,山村才助:土浦の地理学者)
○ 古河歴史博物館  8/27〜12/23
   (鷹見泉石:鷹見泉石の世界図・日本図)
○ 伊奈町立間宮林蔵記念館 (間宮林蔵) 
○ 高萩市歴史民俗資料館 9/1〜11/29
   (長久保赤水:世界に広がる赤水図−長久保赤水資料展−)

 展示を終えて
 今回の展覧会は,茨城大学・日本地理学会の協力のもと,茨城県内の博物館が連携して「茨城の生んだ地理学者たち」というテーマでの展示を行いました。これは茨城大学で日本地理学会の全国大会が開かれるのを機会に,県内各地それぞれの郷土が生んだ地理学者を取り上げ,それをスタンプラリーで結びつけるという県内では初めての試みでした。当館では,郷土が生んだ著名な人物ではなく,古地図に描かれた茨城をとりあげることで,当時の茨城に住む人びとがどのように茨城を捉え,表現していたのかを探ることを目的として展示を行いました。

 展示構成は四部構成とし,国土基本図的な役割を果たした幕府撰国絵図から当時の知識人が描き写した国絵図,出版された国絵図など40点程の資料を展示しました。エントランスホールで幕府撰国絵図の大きさ・彩色の豊かさを知り,大名気分を体験していただくとともに,企画展示室1・2では幕府撰国絵図をもとに作られた日本図や数多くの写図,考証図など,日本や茨城県が当時どのように捉えられていたかをご覧になっていただけたのではないかと思います。

 今回の展示を通して江戸時代の茨城県には地理に関心のある人々が多くいたことがわかりました。同じような様式・内容を持つ常陸国絵図が多数残されており,当時の茨城に住む人々の地理に対する関心の高さを窺うことができると思います。

 会期中には,新聞やラジオなどでも取り上げていただき,また公開講演や講演会,展示解説会を開催して,多くの方々に足をお運びいただきました。古地図でご自分がお住まいの地域をさがし,「地名から地域が現在までつづいていることを実感した」り,「現在とは違う当時の地域の姿に感心」なされたり,現在の地図と当時の地図の違いを興味深くご覧になられたと仰る方など様々なお客様の声をいただくことができました。大変残念だったのは,図録について多数のお問い合わせをいただいたのにもかかわらず,図録の作成を行っていなかったためご要望にお答えする事ができなかったことです。お問い合わせ下さった方には誠に申し訳なく思っております。

 私事ですが,今回の展示が学芸員としての初めての展覧会となりました。初めての展覧会で反省点は多くありますが,学んだことを次からの展示にそれをつなげていけるように頑張りたいと思います。どうもありがとうございました。

 最後になりましたが,この展覧会を開催するにあたってご後援・ご協賛を賜りました関係各機関,ご所蔵者の皆様方に厚くお礼を申し上げます。